1.糖濃度によるインスリン産生制御が可能なインスリン遺伝子導入細胞の開発 培養線維芽細胞への糖代謝関連遺伝子(インスリン、グルコーストランスポーター、グルコカイネース)重複導入後に、培養液中の糖濃度を変化させた。結果、糖濃度を変化させてもプロインスリン産生量に有意な変化は認められなかった。糖濃度によりインスリン産生が調節される際には、上記以外の線維芽細胞中で発現の少ない遺伝子が重要であると考えられた。同じ手法で培養下垂体細胞に上記遺伝子を重複導入した結果、糖濃度に比例してプロインスリン及びインスリン産生の増加が認められた。しかし線維芽細胞の系に比較して、産生量は低く、産生量の増加が課題となった。 2.グルココルチコイド濃度によるインスリン産生制御が可能なインスリン遺伝子導入細胞の開発 培養線維芽細胞にグルココルチコイド反応性プロモーターとともにインスリン遺伝子、グルココルチコイドを重複導入した結果、グルココルチコイド濃度に比例してプロインスリン産生が認められた。遺伝子導入細胞をマウス皮下に移植し、移植部位にステロイド軟膏を塗布し局所のグルココルチコイド濃度を変化させた。結果、ステロイド軟膏の塗布によりマウス血糖値は調節が可能であった。この系は遺伝子転写による調節である為、反応が遅くなりインスリン産生の変化に数時間を要することが欠点である。しかし、糖尿病遺伝子治療モデルにおいて、単に血糖値を低下させるだけでなく、人為的に血糖値を調節することを可能とした。
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