III型高脂血症を発症した世界で3例目のアポ蛋白E(アポE)欠損症の患者の遺伝子解析を行ってきた。患者白血球由来のDNAからアポE遺伝子おクローニングし、アポEをコードする領域を含む約4700bpsの遺伝子配列を決定した結果、第2エクソンに一箇所、イントロンに十箇所の、野生型と異なる遺伝子配列を発見した。しかし、アポE遺伝子の発現調節に重要であると報告されている部位には配列異常は認めなかった。そこで、1)アポ遺伝子上流5kbpsをCATベクターに組み込んだベクターA、2)アポE遺伝子上流5kbpsを含み、かつアポE蛋白のほぼ全長の蛋白とCAT蛋白との融合蛋白を発現するベクターB、を作成しCAT活性にて発現量を調べた。ベクターAをマウスのモノサイト由来白血病細胞株THP-1細胞に導入した実験においては、野生型の遺伝子と比較して軽度の低下を認めたが、患者の病態を説明できる程度ではなく、またヒト肝芽腫細胞株由来のHepG2細胞を用いた場合には野生型との間にはほとんど差が認められなかった。ベクターBをHepG2細胞に遺伝子導入した結果、野生型ではCAT活性が存在するが欠損型ではCAT活性が全く消失していることを確認したため、欠損型と野生型のキメラを4種類作成し実験を行ったが、未だその責任領域を突き止めるところには至っていない。一方、第2エクソンの異常がこの患者にユニークなものか、単なる多型性によるものかを検索する目的で、正常日本人DNA15例と比較したところ、この異常は患者に特異なものであり、しかも患者においてはホモ接合体であることがほぼ確実となった。今後、1)アポE遺伝子をTHE-1細胞に導入し、発現するmRNA量をRT-PCR法にて野生型と比較し、また2)コスミドベクターを使用し更に上流部を含む遺伝子のクローニングを行ない、上流部の検索を行っていく予定である。
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