1.NADPH依存性細胞質甲状腺ホルモン結合蛋白のクローニング 研究代表者は純化したこのNADPH依存性細胞質甲状腺ホルモン結合蛋白の一部のアミノ酸配列を決定を試みた。この蛋白のN末端はブロックされていたがV8プロテアーゼによる切断断片ペプチドの一部のAVTGADVIITVTMATEPRLFというアミノ酸配列を決定した。この配列は既知の蛋白と相同性がないことから、この蛋白は今までに構造解析されていない蛋白であると考えられた。この配列を元に、その両側のDNAプライマーを作成した。これを使ってPCRを行い、このできたオリゴヌクレオチドプローブの配列を決定し、このオリゴヌクレオチドプローブを使いたラット腎cDNAライブラリーのスクリーニングを現在施行中である。また、研究代表者はこの蛋白を特異的に認識するウサギポリクローナル抗体を既に得ているがこれを用いたlambdagT11ラット腎cDNAライブラリーのスクリーニングも現在施行中である。平成6年度前半にはクローニングできると思われる。 2.細胞質甲状腺ホルモン結合蛋白作用の解明 この蛋白を特異的に認識するウサギポリクローナル抗体を用いて、細胞質甲状腺ホルモン結合蛋白を解析したところ、腎臓、肝臓では甲状腺ホルモン欠乏状態で減少し、甲状腺ホルモン補充により増加した。一方、下垂体では甲状腺ホルモン欠乏状態で増加し、甲状腺ホルモン補充により減少した。脾臓、脳では甲状腺ホルモン欠乏状態、甲状腺ホルモン補充によりコントロールとの変化を認めなかった。即ち、この細胞質甲状腺ホルモン結合蛋白は甲状腺ホルモンにより臓器特異的な調節を受けていることが明らかになった。この蛋白の作用の解明はこの蛋白のクローニングにより一気に進展するものと考えられる。
|