研究概要 |
インスリン依存性糖尿病(IDDM)は膵臓beta細胞の破壊が特徴であり、自己免疫反応がその発症機序として考えられている。現時点に於いて最も注目されている自己抗体は分子量64,000のタンパク質に対する抗体であり、IDDM発症を予測しうるマーカーとなっている。1990年、この自己抗体が反応する自己抗原は、グルタミン酸を抑制系のニューロトランスミッターであるGABAに変換する酵素(GAD)であることがBaekkeskovらによって報告された。さらにGADは中枢神経系のみならず膵臓ラ氏島にも存在し、IDDM患者Tリンパ球がGAD刺激に反応することから、GADに対する自己免疫反応がIDDM発症に中心的役割を果たしていると考えられている。GADには異なる遺伝子座にコードされる少なくとも二つの分子(GAD67とGAD65)が存在し、ヒト膵臓型GAD65は1991年Karlsenらによりクローニングされた。 1.我々はヒト膵臓型GAD67をクローニングする目的で、米国UCLAのDr.Yoko Mullenより分与されたヒト膵臓ラ氏島を用いてlambdagtIIcDNAライブラリーを作製しラット膵臓からPCR法を用いて分離したDNAをプローブとしてスクリーニングした。その結果、ヒト膵臓由来のGAD67のクローニング、塩基配列の決定、及び大腸菌での発現に成功した。またヒト膵臓型GAD65も同時にクローン化する事ができた。得られたそれぞれのクローンを発現ベクターに組み込み後、真核細胞にて過剰発現させ、これを用いた抗GAD抗体のアッセイにも成功した。 2.一方IDDM患者血清中には、抗GAD抗体以外にも未知の膵臓ラ氏島細胞成分に対する自己抗体(ICAs)が存在することが知られているが、我々は既にIDDM患者血清を用いてlambdagtIIcDNAライブラリーをスクリーニングし、患者血清と反応するクローンを得ているので、このクローンの解析も行う予定である。
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