クッシング病下垂体腺腫細胞および、対照として正常ラット下垂体前葉(rAP)細胞、AtT20細胞の各培養系を用いて、c-fos、c-jun mRNAの発現と、アンチセンスFos、JunのPOMC mRANにおよぼす作用を検討した。 1.各種下垂体細胞におけるc-fos、c-jun mRNAの発現;クッシング病下垂体腺腫細胞、rAP細胞、AtT20細胞の全てにおいて、CRH添加により一過性にc-fos mRNAの発現を認めた。そのタイムコースは30分をピークとし、3種の細胞間で明らかな差はみとめなかった。 c-jun mRNAは、全ての細胞において基礎レベルで検出され、CRHにより増加を認めなかった。このc-jun mRNAのconstitutiveな発現は、rAP細胞に比し、他の2種の腫瘍細胞で多い傾向が見られた。 2.アンチセンスFos、JunのPOMC mRNAにおよぼす作用:c-fos、c-junに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを作成し、3種細胞に添加後、POMC mRNAのCRHに対する反応を検討した。rAP細胞では、アンチセンスFos、Jun5時間の前処置により、CRHに対するPOMC mRNAの増加反応が抑制された。一方AtT20細胞では、5時間の前処理では効果を認めず、アンチセンスJunとの24時間の前処置により、初めてCRH作用の抑制がみられた。 まとめ:以上の結果より、CRHよりPOMC mRNA増加作用の少なくとも一部は、Fos、Junを介すると考えられ腫瘍化によりFos、Junを介した調整に変化が生ずる可能性が示唆された。これらの結果は、平成5年度日本内分泌学会秋季学術大会のシンポジウムにて発表し、一部、平成6年度日本内分泌学会総会で発表の予定である。
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