血液系細胞株24種について、D型サイクリンの発現をノーザン解析で検討したところ、サイクリンD3の発現はすべての細胞に検出された。一方、サイクリンD1とD2は、細胞ごとにそれらの発現の有無が異なっていた。サイクリンD2は、主に骨髄系細胞ならびにTリンパ球系細胞に発現が見られ、Bリンパ球系の一部の細胞にも発現が見られた。一方、サイクリンDの発現は、巨核球系細胞の一部、Tリンパ球系の一部の細胞に見られた。さらに、Bリンパ球系の最終分化段階である形質細胞株では、サイクリンD3の発現しか検出されなかった。臨床から得られた少数例の血液系腫瘍細胞の解析においても、同様の結果が得られた。これらのデータは、多能性血液幹細胞から種々の系統に分化・増殖する際に、D型サイクリンが系統特異的もしくは分化段階特異的に発現制御を受けている可能性を示している。特に分化段階の未熟な細胞は、すべてのD型サイクリンを発現し、分化と共に、サイクリンD1もしくは、D2の何れかあるいは両者の発現を失うことが予想された。正常細胞での検討を行なうために、in situ hybridizationの系の確立に努力している。D型サイクリンの三者を発現する巨核球系細胞株Meg01s細胞で、細胞周期同調実験を行い、細胞周期依存性発現を検討したところ、D型サイクリン何れもが、少なくともmRNAレベルでは、細胞周期依存性を示さなかった。以上から、血液系細胞において、D型サイクリンの発現は、系統もしくは分化段階特異的な意義を持つことが示唆された。
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