G-CSFは顆粒球系の分化、増殖因子であるのみならず造血幹細胞をも刺激することが知られている。我々は、先ずG-CSFの刺激に応じて発現が増強される遺伝子cDNAのクローン化を、G-CSFにより分化誘導をうけ、かつ多能性造血幹細胞レベルでの単クローン性増殖性疾患であるCML-CP患者骨髄単核球を用いておこなった。これは分化停止機構で特徴づけられるAMLの病態解明およびその治療に重要な情報を与えるのみならず多能性幹細胞に対する増幅因子に反応して発現増強するマーカー遺伝子としてももちいることができると考えられた。方法としては先ずCML-CP患者骨髄単核球をG-CSF存在下で18時間培養後に回収しRNA抽出後mRANを精製し、lambdagt10cDNAライブラリーを作成し、次にG-CSF刺激、無刺激CML細胞由来のcDNAをスクリーニング用のプローブとして、24個のG-CSF刺激プローブにより特異的にハイブリダイズするクローンを選択した。このうち1クローン(GIG-1)のmRNAは約0.9kbであり、G-CSF刺激CML細胞でその発現が増強する遺伝子であるのみならず、主に骨髄系白血病細胞株で発現することが確認された。さらに我々は同様な手法を用いて胎生期初期造血の場として重要な胎児肝細胞から、造血幹細胞の増殖、分化にかかわる物質の遺伝子クローニングを試みた。すなわち、先ずヒト胎児肝細胞より抽出したmRNAよりcDNAを合成しヒト成人肝細胞mRNAと重複する分画をハイドロキシアパタイト法で除去し、胎児肝細胞に特有な発現cDNAライブラリーを高発現SRalphaプロモーターを有するpME18Sベクターを用いて作製した。今後は、モノクロナール抗体を用いて分離したCD34陽性細胞を対象にスクリーニング後、高度に幹細胞増幅能を有するcDNAのクローン化を行う予定である。
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