研究概要 |
前白血病状態と考えられている骨髄異形成症候群(MDS)に対するサイトカイン療法の有効性と安全性を調べるために以下の実験を行なった。即ちMDS患者19例(低リスクMDS群8例,高リスクMDS群6例,白血病移行群5例)および健常者4例の骨髄(一部末梢血)細胞から、免疫磁性ビーズ法にてCD34陽性分画を分離してG-CSFまたはGM-CSF存在下に7日間液体培養後、芽球の動態をインビトロで観察した。その結果各群ともCSF存在下で細胞数が増加したが、健常者群で芽球割合が低下して順調に分化成熟していったのに対して、MDS各群、とくにリスクの高い群では芽球がCSFによって著増した2例を含めて、芽球の残存傾向が見られた。培養前後に核型分析を施行し得た4例のMDSでは、異常核型のクローンがインビトロでCSFによって支持されていた。従ってとくに芽球割合の多い病型では、CSFによってさらに芽球の増加をきたす可能性が考えられた。 次にMDS細胞の長期培養に取り組み、長期培養細胞株が得られたので報告する。患者は、RARSの52歳男性で、白血病化をみることなく出血傾向にて死亡した。生前の患者骨髄よりIL-3依存性細胞株MDS92が樹立された。MDS92は現在まで19カ月にわたって継代されている。形態上は芽球様細胞から成熟好中球・単球様細胞まで混在しており、IL-3、GM-CSFまたはSteel factor存在下で増殖し、種々のミエロイドコロニーを形成した。核型分析の結果、クローナルに5番,7番染色体の欠先を含む複雑な異常を認め、またN-ras遺伝子解析にてコドン12にGGT→GCTの点突然変異が検出された。以上よりMDS92は前白血病状態の特徴を反映するユニークな細胞株と考えられ、今後本細胞株用いて分子・細胞生物学的解析を予定している。
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