研究概要 |
本研究においては,血小板機能発現における重要な関与が示唆されている蛋白質チロシンリン酸化反応の中で,特に分子量約120kのチロシンリン酸化蛋白質(p120)の同定を中心に検討する予定であった。研究計画調書(研究計画・方法)に記したように,まず抗rasGAP抗体による免疫沈降の系の確立に努めたが,残念ながら達成されなかった。その間に,Brugge等のグループにより血小板pp125FAKの報告がなされた。それと我々の蛋白質チロシンリン酸化反応のデータとの比較検討により,p120が(少なくともその一部は)pp125FAKであることは間違いないと判断された(ウエスタン・ブロッティングによる追試を施行した)。 最近,このpp125FAKとインテグリン・細胞骨格との有機的関連について,多くの細胞系において注目かつ研究されている。細胞骨格の変動が,凝集反応という生理的機能発現と一体となってダイナミックにとらえることが可能な血小板の系においては,いっそう興味深いテーマと考えられる。本研究の将来的な発展についても,pp125FAKと血小板凝集反応の機能的関連ということを考慮している。 以上のように,本研究は当初の計画通りには進展しなかったわけであるが,研究遂行のための,血小板蛋白質チロシンリン酸化反応の詳細な検討,イノシトールリン脂質との関連の検討を通じて,次記の研究発表を行うことができ,非常に有意義なものとすることができたと考えられる。
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