研究概要 |
前年度までの研究で、造血器腫瘍では未分化な形質を持つ白血病細胞に高頻度にWT-1遺伝子の発現が認められることを明らかにしてきた。また、骨髄球系白血病細胞株を用いた実験で、各種分化誘導物質添加により、単球系あるいは、顆粒球系へ成熟させることにより、WT-1遺伝子発現の低下を認めた。以上のことにより、WT-1遺伝子の発現は、未分化白血病の増殖,病態に深い関わりがあると推定される。一方、我々はCD7陽性白血病がAML,ALLを問わず、未分化で、治療抵抗性であることを報告してきた。またCD7陽性急性白血病では多剤耐性遺伝子(MDR1)の発現が、他の白血病に比べ頻度高く、その治療抵抗性に関与している可能性を示唆した。また、正常造血細胞の研究から、血液幹細胞にはMDR1が発現していることが示されている。以上のことより、CD7陽性急性白血病は独立した疾患単位であり、幹細胞性白血病として把握可能である。WT-1遺伝子発現は、このような未分化白血病細胞の一つの特徴であり、病態形成に深く関与するものと考えられる。WT-1は各種増殖関連遺伝子の発現を制御し、細胞周期制御にも関与している可能性が示唆されており、白血病発生機序、病態の解明に重大なかぎを握るものと思われる。
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