研究概要 |
本年度は、8;21転座型白血病の遺伝子発現変化を、8;21転座型白血病細胞株であるKasumi-1細胞株と、患者サンプルを用い検討を行った。成果は以下に示すとうりである。 1)8;21転座接合部位遺伝子(AML1-MTG8)に対するアンチセンスDNAを作成し、そのKasumi-1細胞株の増殖分化能に及ぼす効果をコロニー法にて検討した。アンチセンスDNAはKasumi-1の増殖を抑制したが、分化には影響を与えずNAP,GM-CSFレプターalpha鎖(GM-CSFRalpha)の発現を回復しなかった。AML1-MTG8接合遺伝子が直接的に8;21転座型白血病の増殖に関与している証明をさらに症例にて検討すべく実験を継続中である。 2)Kasumi-1細胞株、8;21転座型白血病症例においてサイトカインレセプターアッセイを行ったところ、特異的にGM-CSFRalphaの発現が低下していることを証明した。 3)白血病症例のDNA解析にて、テロメアDNAの短縮が、8;21転座型白血病に特異的に認められることを報告し、この病型における遺伝子不安定性の存在の証明、性染色体欠失の多発、偽染色体領域に位置するGM-CSFRalpha低下の成因に示唆を与えた。 4)インターフェロンalphaが、8;21転座型白血病の増殖を抑制し、その原因はインターフェロンによる直接的なAML1-NTG8接合遺伝子発現の抑制であることを、RNA解析により証明した。
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