平成5年度の科学研究費補助金交付申請書に記載された研究実施計画は全て達成され、その結果は論題“Ligand-dependent polyubiquitination of c-kit gene product:a possible mechanism of receptor down modulation in MO7e cells"として雑誌Bloodに発表された。その概要は下記の通りである。 1)Steel factor刺激によりc-kit蛋白はpolyubiquitinationという蛋白修飾を受け、SDS-PAGE上、145kDa以上の高分子領域にsmearなbandとして泳動される。 2)ligand刺激によるこのc-kitのpolyubiquitinationは、4℃の低温下及び0.2% sodium azideの存在下、或はanti-c-kit antibodyで細胞を前処置することでほぼ完全にblockされる。 3)Steel factor刺激後、アイソトープ標識されたc-kit蛋白は、短時間に細胞内にinternalizationされ、かつ分解される(T1/2:〜20min)。また、c-kitの分解速度はpolyubiquitinationが阻害される上記の条件下で、有意の低下を認めた。 以上の結果よりligand刺激によって誘導されるreceptorのubiquiinationがreceptorの発現調節並びに活性化されたreceptorのスイッチをオフする生物学的意義を有することが示唆された。 上記の結果を踏まえて、申請者は膜結合型および分泌型(可溶型)Steel factorのisoform間で、c-kit蛋白の分解速度ならびにtyrosine kinase活性化のkineticsの相違を検討する方向で研究を進めたい。
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