再生不良性貧血患者7例の骨髄生検および骨髄クロットのパラフィン標本を用いて免疫組織化学を行った。対照として骨髄抑制および骨髄浸潤を認めないリンパ腫患者の骨髄組織を用いた。抗c-kit抗体はc-kit分子の細胞内ドメインを認識する抗体を、抗SCF(Stem cell factor)抗体はSCFの細胞外ドメインを認識する抗体をそれぞれ用い、その発現、分布を検討した。対照群ではc-kit陽性細胞は比較的均一に多数分布しているが、SCF陽性細胞は多少とも局在があり、しかもその数はc-kit陽性細胞に比し少ない傾向にあった。再生不良性貧血患者骨髄ではc-kit陽性細胞の数は非常に少なく、なかには陽性細胞を認めない症例もあった。また陽性細胞の染色性の程度も対照群に比べ弱かった。一方、再生不良性貧血患者骨髄中のSCF陽性細胞の数は多く、また染色性も強く、SCF産生量が上昇していることが考えられた。以上より今回検索し得た7例においては、再生不良性貧血の原因としてc-kit陽性細胞、すなわち幹細胞レベルでのc-kit発現異常が存在し、病態の一因をなすことが示唆された。また、骨髄輸注療法前後の骨髄組織を経時的に検討しているが、症例数が少ないこと、および未だ臨床的効果が現れておらず、検討を重ねていく予定である。 CFU-F、CFU-GM、CFU-Eのコロニーアッセイ、検討し得た症例数が少なく、評価できる結果得られなかったが、免疫組織化学と同様、幹細胞の障害が想定される傾向にはあり、今後さらに検討を重ねる予定である。
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