研究概要 |
腫瘍細胞に対して細胞障害性を示す腫瘍壊死因子(TNF)の生物活性は、細胞膜上のTNF受容体を介して情報伝達されている。このTNF受容体には、分子量55kDと75kDとの2種類が存在することが報告されている。報告者は、TNF受容体を多数発現しているヒト単芽球細胞株THP-1を免疫して、その細胞上のTNF受容体へのTNFの結合を阻害するマウスモノクローナル抗体8022(IgMクラス)を作製した。この8022抗体は、THP-1細胞へのTNFの結合を最大50%阻害した。しかし、IFN-gammaやinsulinのそれら受容体への結合には影響しなかった。次に、種々の細胞における8022抗原と2種類のTNF受容体(55kDと75kD)の発現について、それぞれの特異抗体を用いて蛍光抗体染色しflow cytometryにて解析した。その結果、8022抗原は、単球系細胞株であるTHP-1,U937、前骨髄性細胞株HL-60、B細胞系細胞株RPMI8866に強く発現していた。しかし、T細胞であるCEMやMolt4ではその発現はわずかであった。一方、ヒト末梢血細胞の8022抗原の発現は、リンパ球ではほとんど検出されず、単球にその発現が認められた。ヒト単球における2種類のTNF受容体は、55kDの受容体のみ認められ、75kDの受容体はほとんど検出されない。そこで、ヒト単球における55kDのTNF受容体と8022抗原の関係について検討したところ、8022抗原陽性で55kDのTNF受容体陰性の単球分画が存在していた。この結果より、8022抗原と55kDのTNF受容体が同一の分子でないことが示唆された。現在、8022抗原分子の同定と既知のTNF受容体分子との関係について検討中である。
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