研究概要 |
飢餓(約24時間)による低血糖状態(平均血糖50mg/dl)での低酸素負荷とインシュリン低血糖(平均血糖31.5mg/dl)における低酸素負荷および低酸素単独負荷時の脳内エネルギー代謝の変動と血液生化学検査の差異について検討した。低酸素負荷は吸入酸素濃度を0.08→0.06→0.05と15分毎に低下させ行った。 結果は1.脳内エネルギー代謝障害と考えられるPCr/Piが1以下に陥るまでの時間は,飢餓による低血糖群(以下飢餓群)と低酸素単独負荷群(以下単独群)には差がなく,インシュリン低血糖群(以下インシュリン群)が有意に長かった。 2.蘇生を要するまでの時間は,インシュリン群が最も短く,飢餓群,単独群の順であった。 3.蘇生時の乳酸値は,単独群が有意に高く,インシュリン群,飢餓群の間には有意差は認めなかった。 4.蘇生時の細胞内pHは,飢餓群が最も高く,インシュリン群,単独群の間には有意差がなかった。 5.インシュリン群,単独群では,蘇生120分後のPCr/Piは負荷前値に回復したが,飢餓群では蘇生に成功した例は少なかったが,糖液の投与にもかかわらずPCr/Piは前値まで回復しなかった。 6.全群とも,平均動脈血圧が約60mmHg以下に低下するのに伴い,PCr/Piが1以下に急激に低下した。この平均動脈血圧が60mmHg以下に低下する時期は,我々がparallelexperimentで報告したが,脳血流が前値以下に低下する時期に一致していた。 以上のことより,脳内エネルギー代謝を保つためには,脳血流を保つことが重要である事,飢餓による低血糖時に低酸素状態に陥ると後障害を残す可能性が考えられた。今後,高血糖時の低酸素負荷時の脳内エネルギー代謝についても検討を行いたい。
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