腎臓移植前に免疫抑制剤を投与しながら、ドナーの白血球をレシピエントの末梢血リンパ球を単クローン抗体とフローサイトメトリーを用いて免疫学的に解析した。特に、拒絶反応のときに上昇するIL-2レセプターbeta鎖陽性T細胞率に注目し、拒絶反応につながる免疫反応を移植前に検討した。12例について解析し、IL-2レセプターbeta鎖陽性T細胞率が15%以上になり、拒絶反応を起こし易い人5人と、15%以下で拒絶反応を起こしにくい人7人とを、移植前に区別することができた。これから、拒絶反応予知の可能性を確認した。また、この解析で正確に予知できなかつた症例が1例あった。そこで、この予知をより確実なものにするために、免疫抑制剤感受性試験を併用したところ、今のところ少数例ではあるが非常に正確に拒絶反応を予知することができた。 また、同様の反応をin vitroのリンパ球混合培養で短時間に再現し、移植前にin vitroの解析によって拒絶反応の予知が可能かどうかを検討することを目的して、リンパ球を各種免疫抑制剤存在下に混合培養しbeta鎖陽性細胞率を解析した。少数例の解析しか済んではいないが、数時間の培養でbeta鎖陽性細胞率の上昇がin vitroで観察できた。さらに、in vitroの結果とin vivoの結果とを比較し、これによって臓器移植の拒絶反応の予知の可能性を検討していきたい。 これらの方法によって、移植前に拒絶反応予知が正確に可能となれば、適切な免疫抑制をすることができ、臓器移植の成績を向上させることができると考えている。
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