肝移植における冷保存は移植片に対し、内皮細胞障害や肝細胞障害を来たすことが知られ、これらの障害が移植後の肝障害の原因になり、ひいてはgraft lossにつながることが報告されている。冷保存肝障害の迅速な定量法の確立、および、近年、臓器障害の要因として注目される血小板活性化因子(platelet activating factor;以下、PAF)の肝移植における意義について検討することを本奨励研究の目的とし、以下のような成果を得た。 1.迅速なgraft viability assay法の確立 viableな細胞の定量法として知られるtriphenylterazolium chloride reduction法を、冷保存肝のviability assayに適用できるかを検討した結果、triphenyltetrazolium chloride reduction法は肝の高エネルギー燐酸化合物量や酸素消費量と良好な相関を示し、その有用性が示された。本論文はTransplantationにacceptされた(in press)。 2.肝移植術中のPAFの変動 生体部分肝移植術中において、PAFは門脈再潅流直後に有意に上昇し、術後肝障害との関連性が示唆された。本論文はClinical Transplantationにacceptされた。 3.PAFと冷保存肝障害との関連についての実験的検討 ラットを用いた実験において、PAFが冷保存肝に及ぼす障害機序を検討した結果、PAFは内皮細胞よりも肝実質細胞を主に障害することが示された。本論文はBritish Jounal of Surgeryに投稿中である。
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