研究概要 |
コラーゲンの架橋成分として主に骨・軟骨組織に由来する尿中pyridinoline/Cr(PYR),deoxypyridinoline/Creatinine(DPYR)(pmol/mumol)の乳癌骨転移診断における有用性を動物モデルおよび臨床例を用いて検討した.(1)実験的検討:SHRラットの左総頚動脈より胸部大動脈内に留置したカニューレよりc-SST-2細胞(ラット自然発生乳癌細胞)を両側腎動脈クランプ下に注射することにより骨転移を作製した。4週後屠殺し、組織学的に骨および他臓器転移を確認した。同様の方法で生理食塩水を注射し、コントロールとした。注射後2、4週目に骨関連マーカーの測定を施行した骨転移群、他臓器転移群、コントロール群について比較検討した。(2)臨床的検討:乳癌患者を画像診断にて無再発群、骨転移群(骨転移単独)、多臓器転移群(骨+他臓器転移)に分類し、それぞれの尿中PYR,DPYRを測定し、比較検討した。(結果)(1)実験的検討:注射後2週目では、60%に骨髄内の微小転移巣を認め、4週目では78%に骨破壊を伴う骨転移を認めた。2週目では、血清、尿中の骨関連マーカーのいずれも3群間に有意な差を認めなかったが、4週目では、PYR,DPYRは骨転移群で他臓器転移群、コントロール群に比し有意に高値を示した。他臓器転移群とコントロール群の間には差を認めなかった。(2)臨床的検討:3群間で、検体採取時の年齢、閉経状況、初発時のERに差を認められなかったが、PYRは多臓器転移群,骨転移群で、無再発群に比し有意に高値を示し、DPYRも同様に多臓器転移群、骨転移群で無再発群に比して高値を示した。多臓器転移群と骨転移群との間には差を認めなかった。(結論)尿中PYR,DPYRは他臓器転移との相関を認めず、骨転移に特異的なマーカーとして有用であることが示唆された。
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