研究概要 |
慢性肝疾患の治療負応用を目標として、動物に肝細胞移植を行い、肝細胞増殖因子(HGF,TGF-alpha,TGF-beta)の細胞増殖効果を検討した。ラットまたはマウスを用い、ドナー肝細胞の調製はSeglenの2段階潅流法に従い、レシピエントの肝内に経門脈的に移植した。 HGFは1986年には蛋白質として純化されたHGF遺伝子のクローニングにも成功しており、定量的評価が可能となった。細胞増殖効果は先天性代謝障害動物(先天性glucuronyl transferase欠損ラット)の代謝改善度(ビリルビン値低下)をみることで総体として評価した。一般の肝疾患に対する臨床応用を考え、細胞増殖動態のモニタリング法として、ドナー肝細胞にブロモデオキシウリジン標識を行い、増殖動態の観察を行った。しかしこの方法では急性期の観察に限られるため定量的評価は今後の課題であると考えられた。一方、ドナー肝細胞としてHBsAg産生性トランスジェニックスマウスを用いた系では増殖動態の長期的な観察が可能であると考えられた。今後、肝細胞増殖因子の効果判定を定量化する予定である。 肝細胞増殖因子(HGF)は1984年に発見されて以来、その構造、クローニング化、レセプターなどがいずれも本邦で明らかにされてきた。肝切除動物におけるHGFの肝再生促進効果はすでに証明されているが、肝細胞移植に対する効果はまだ明らかではない。種々の病態下における増殖因子の移植細胞に対する特異性についても今後明らかにすべき問題である。
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