純系ラットPVG(RT1c)における、門脈-下大静脈吻合(Portocaval shunt:PCS)モデルと門脈-下大静脈交差吻合(Portocaval transposition:PCT)モデルを確立した。PCSラットは、PCS作成後、体重の増加は認められず、肝臓も萎縮した。しかし、PCSラットの生命予後に影響はなく、長期生存した。PCTラットはコントロール群(開腹のみ)と同様に、術後も体重増加をしめし、肝臓にも著変を認めなかった。PCS、PCTラットとも、術後1、2、5、10週の血清GOT、GPT、T-Bil、などに異常を認めなかった。コントロール群、PCS群、PCT群のPVGラットに、純系ラットDA(RT1a)の異所性心移植を行い、移植心の生着日数を観察した。各群とも、DA移植心は、6-7日の間に拒絶された。以上より、同種異系間の心移植の1次免疫反応における門脈血の影響は、ないものと考えられた。次に、同様のモデルを用いて、2次免疫反応についての実験を行った。コントロール群、PCS群、PCT群のPVGラットに、純系ラットDAの30%肝臓を、腹腔内に留置し、2週間後にDAの異所性心移植を行い、生着日数を観察した。PCS群は、他の2群に比し、有意にDA移植心の生着日数の延長が認められた。これは、同種異系間の2次免疫反応において、門脈血流が重要な影響を、及ぼしていることが示唆される。今後、PCS、PCT作成とDA肝留置の間隔、また、DA肝留置とDA移植心との間隔を変化させ、実験を継続させたい。
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