組織伸展法において、これまで解明されていなかった以下の点につき、臨床例を中心に研究を行った。 (1)植皮、皮弁との併用に於ける生着域の拡大 (2)組織伸展条件(生理食塩水注入量、時間、速度、圧力) (3)長期経過後の組織変化 その結果 (1)植皮については、通常の植皮と比較して生着状態が良好なだけでなく、色調・質感の連統性の獲得も可能であった。 皮弁においても、delay効果+Capsular plexusによる血行増多により通常の生着域を越えた拡大皮弁の採取が可能となった。 (2)種々の条件下で、組織伸展を試みたが、術中組織伸展と、亜急速組織伸展(SARTE)、更に過容量組織伸展(OITE)の複合で行うcombined expansionが最も安全かつ早期に組織伸展が得られることが明らかとなった。 (3)長期経過による伸展皮膚の変化としては、通常法による再建に比較して組織の肥厚化が抑制され、また特に植皮においては、通常の植皮で認められる術後の拘縮、後戻りが極めて少ないことが明らかとなった。したがって、機能面はもとより、Unit原理をふまえた整容面を考慮した再建に対しても、本法の有用性は高いと思われた。これらについては、日本形成外科学会、ASEAN形成外科学会、PAN-PACIFIC SURGICAL MEETINGにて発表を行った。 また現在、ラットを用いた組織内カプセル(被膜)の経時的変化、ならびに血管増生組織学的分析が研究途上であるが、これにより伸展組織の安全性、更なる皮弁生着域の拡大と限界が明らかとなれば更に本法の応用範囲は広がるものと考えられる。
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