92年度の研究において、覚醒下でのラット小腸運動を記録し、ラットの空腹期強収縮運動(IMC)の出現間隔は11〜13分、持続時間は約4分および食後期パターンは約2〜5時間持続し、犬との周期性の違いを明らかにすることができた。93年度は胃および大腸運動についても記録し、消化管部位別の収縮周期の違いについて検討するとともに、麻酔薬投与の影響についても検討した。 1.覚醒下での胃、小腸および大腸運動の記録 ストレインゲージをラット胃(前庭部)、小腸(トライツ靱帯より20cm肛側)および大腸(虫垂より5cm肛側)に逢着し、部位別の収縮形態について観察した。胃では約6回/min、空腸では30回/min、結腸では10〜12回/minであった。これまでの報告によるとヒトにおける胃収縮頻度は約3回/min、空腸では約10〜14回/min、大腸では5〜6回/minとされている。今回の結果より、ラット消化管運動の収縮頻度はイヌあるいはヒトの約2倍であり、IMCの出現周期も短いことがわかった。 胃および小腸運動に対する麻酔の影響について 術後10日目にバルビツレートであるチアミラールナトリウムを20mg/kg腹腔内投与して麻酔し、胃および空腸運動への影響を観察した。術後の腸管麻痺の要因には開腹手術による操作や消化管の露出の他に、全身麻酔の影響も考えられるが、麻酔の影響は受けないとする報告もみられる。今回本実験に使用したチアミラールナトリウムは、バルビツレートの全身麻酔剤であるが、胃運動は抑制されたものの空腸では正常なIMCの出現が観察された。これらの結果より、術後腸管麻痺には麻酔の影響も受けるものの手術操作が大きく関与していることが示唆された。
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