研究概要 |
血管新生阻害剤TNP-470による、大腸癌肝転移抑制効果について、従来のモデルに比較しヒト生体内における大腸癌肝転移形成過程に極めて類似したヒト大腸癌同所再建肝転移モデルを使用し検討した。 材料と方法 動物:5週齢、雄のBALB/cヌードマウス。 腫瘍:大腸癌肝転移巣より採取した腫瘍組織片をヌードマウス背部皮下に移植、継代し、当科にて樹立したヌードマウス可移植性ヒト大腸癌株(TK-3,TK-9)。 転移モデルの作製:ヌードマウスを麻酔下に開腹し、3mm角の腫瘍組織片を、小損傷を加えた盲腸漿膜壁に縫着し、6週後に屠殺評価した。 投与方法:治療群には腫瘍組織縫着10日後よりTNP-470を20mg/kg(n=10)、30mg/kg(n=7)隔日皮下投与した。対照群(n=23)には同様に生理食塩水を皮下投与した。 結果 1,盲腸に移植したヒト大腸癌は、全マウスに局所の腫瘍増殖を認めたが、治療群と対照群の実測腫瘍重量を比較すると、0.36±0.28g vs 0.39±0.27gと両群間には有意差を認めなかった。2.対照群では15/23(65.2%)に肝転移を認め、20mg/kg投与群では3/10(30%)の肝転移を認めたのに対し、30mg/kg投与群では肝転移が観察されず、TNP-470は用量依存性に肝転移抑制効果を示した。肝転移結節数においても、対照群と治療群では3.9±4.3 vs 0.9±2.2と有意差(p<0.05)を認めた。3.全マウスに、鼡径リンパ節転移を認め、両群間に差を認めず、体重も両群間に有意差を認めなかった。 まとめ ヒト大腸癌同所再建肝転移モデルにおいてTNP-470は、1.用量依存性に肝転移を抑制した。2.原発巣の腫瘍増殖、リンパ節転移に関しては抑制効果を認めなかった。3.体重減少等の副作用を認めなかった。以上より、TNP-470は大腸癌肝転移を選択的に抑制する可能性が示唆された。
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