生体内のH2Oを重水(D2O)に置換することによる影響に細胞内pHの上昇、Ca濃度の上昇抑制、酵素活性の抑制、膜の安定化があり臓器保存に有用であると考えられる。これまでに保存液中のH2OをD2Oに置換し移植後のgraft viabilityを良好に保持しうるとの報告があるが温阻血障害に対する有用性に関しての検討はない。今回、ラット腎温阻血に及ぼす影響を検討した。(方法と結果)Wistar系ラットを用いた。まずD2O投与の安全性を検討した。D2O 10mL静注群(n=3)は全例死亡したが5mL静注群(n=3)は全例生存し、投与後血中クレアチニン値の上昇を認めなかった。温阻血24時間、30分前にD2OまたはH2Oを5mLずつ大腿静脈より静注した。右腎を摘出後、左腎を周囲より遊離し血管クリップにて左腎動静脈を遮断した。ラットを以下の4群に分け、温阻血後48時間のクレアチニン値、左/右腎重量比を比較した。統計学的検討はunpaired t-testを用いた。 今回は膵温阻血障害に対する重水の影響は検討しなかったが、重水はクレアチニン値から評価したラット腎温阻血障害を増強し有用とはいえなかった。
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