研究概要 |
癌転移・浸潤能に及ぼす活性酸素の影響を電子スピン共鳴装置と基底膜浸潤モデルおよびマウス大腸癌肝転移モデルを用いて検討した。腫瘍細胞としてCOLON26-M5マウス大腸癌細胞を用いた。その結果、腫瘍細胞からは活性酸素の恒常的な放出が認められ,その放出はPMA処理にて有意に増加した。肝転移モデルに活性酸素消去酵素であるSOD.catalaseを皮下投与したところ.肝転移結節数はSOD投与群において有意に増加し,catalase投与群では転移が抑制された。また腫瘍細胞のPMA前処理により肝転移は有意に増加した。一方,PMA前処理にて増強した基底膜腫瘍細胞浸潤能はSODにより有意に抑制されたがcatalaseでは抑制効果は得られなかった。以上より,転移過程において活性酸素,特にhydrogen peroxide(H_2O_2)が重要な働きをしており,腫瘍細胞みずから産生する活性酸素が肝転移形成に関与していることが考えられ,また腫瘍細胞基底膜浸潤能においては腫瘍細胞の産生する活性酸素種の中でも,特にsuperoxide anion(O^-_2)が関与していることが示唆された。
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