下咽頭頚部食道癌に対する食道切除後の再建術式として、遊離空腸移植は確立された感があるが、今だに栄養血管の閉塞は重篤な合併症の一つである。その予防処置として、PGE_1の新生血管増加作用が移植組織の早期生着に有効であるかどうかを検討する目的で実験検討した。 実験はラットを用いて行った。ラットを開腹後、Treitz靭帯より肛門側約5cmの部位において腸間膜に切開を加え、約2cmの空腸の両端を切離し、その腸管が1本の動静脈によってのみ栄養されるように遊離する。 次に腹直筋筋膜上で広範囲に皮下剥離を行い、遊離した腸管を空置して2カ所に腸瘻を作成する。そして、PGE_1投与群は、ラット腹腔内にPGE_1を術中及び術後2日目から毎日1回一定時間にone shotで投与した。 PGE_1はエタノールで溶解し、一回量2mug/kg/dayとして使用した。ラットはPGE_1投与群と非投与群に分け、それぞれ3群に分類した。第1-3群はそれぞれ5、7、14日後に血管柄を結紮した群とした。各群とも結紮2日後に移植腸管を摘出し、肉眼的・組織学的検討を加えて生着の有無を判定し、生着率を算出した。 その結果、PGE_1投与群と非投与群の生着率は、5日目結紮群が28.6%および0%、7日目結紮群が75.0%及び37.5%、14日目結紮群が100%及び100%となり、5日目と7日目結紮群において各群間に有意差が認められた。 従って、PGE_1の投与により、組織生着に必要な新生血管の増殖を促し、血流を増加させ、生着最短期間が短くなることが判明した。今後、他の薬剤についても検討する予定である。
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