われわれは、固形腫瘍に対する化学療法の選択的抗腫瘍効果増強を目的として人工生体膜モデルのリポソームに抗癌剤を封入した治療の検討を行ってきた。今回は、リポソーム表面に腫瘍関連モノクロナール抗体を結合させ、腫瘍選択性の向上を目的とした。さらに投与経路を腹腔内とすることで、その抗腫瘍効果、特に腹膜播種腫瘍の抑制、また、腸管癒着の抑制効果などの検討を計画した。今年度の成果は、 1.アドリアマイシン封入単層リポソームを作製した。 2.1.で得られたリポソームの表面に抗AFPモノクロナール抗体を結合させた。 3.in vitroにおいて、抗AFPモノクロナール抗体結合リポソームの腫瘍選択性の向上を確認をした。 4.ヌードマウスにてAFP産生ヒト肝癌株NUEの腹膜播種モデルを作製した。 以上であるが、今後は治療実験としてヌードマウスの腹腔内に2.で得られたアドリアマイシン封入リポソームを5mg/kg投与しアドリアマイシンの体内動態、腹膜播種腫瘍への腫瘍効果の検討を行う。さらに腸管の癒着への影響も検討する。
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