重症感染症に対するG-CSFの効果とその副作用として考えられるARDS発生予防としての抗CD18抗体投与効果に関する検討を施行した。 150g前後のwistar系雄性ラットをもちい、Wichtermanらの方法に準じて盲腸結紮、穿刺法にて腹膜炎を作成後、1)生理食塩水100mul/日/皮下投与、2)G-CSF100mul/日/皮下投与、3)G-CSF100mu/日+抗CD18抗体2mg/kg/日/皮下投与を3日間施行し以下の検討を施行した。[結果]1:生存率:対照群の生存率が25%であったのに比較し、G-CSF投与群では68%、G-CSF+抗CD18抗体投与群では84%と有意の生存率の改善を認めた。2:顆粒球CD18レセプターに関する検討:^<125>I-抗CD18抗体をもちいてCD18レセプターについて検討したところ、対照群に比較してG-CSF投与群のレセプターは著明に増加していた。しかし、抗CD18抗体投与群ではその増加が抑制されていたが、正常群よりは有意差をもって増加していた。3:顆粒球貧食能に関する検討:対照群に比較し、G-CSF投与群の貧食能は著明に増加していた。この傾向は抗体投与にても変化を認めなかった。4:活性酸素産生能の検討:G-CSF投与にて活性酸素生能は著明に亢進し、正常群との間に有意差を認めた。抗体投与にても活性酸素産生能の低下は認められなかった。5:過酸化水素産生能に関する検討:過酸化水素産生はG-CSF投与にて有意に増加した。この増加は抗CD18抗体投与にても低下しなかった。 以上により、抗CD18抗体を投与することはG-CSF投与により発生する可能性のあるARDSを顆粒球の組織粘着能を低下させることにより防止する可能性があり、しかも、それは顆粒球機能を低下せしめないで可能であると思われた。
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