1.ヒト血清チミジンキナーゼ活性測定方法に関する検討 まず、^3HチミジンとATPを基質としMgイオン存在下に血清チミジンキナーゼ(TK)活性測定を試みた。この反応系においては、37℃で2時間インキュベートしてもチミジンのリン酸化物はほとんど得られず、十分なTK活性は測定できなかった。この系に5mMのジチオスレイトール(DTT)を加えると、TK活性は十数倍に上昇し、ヒト血清中のTK活性も十分測定可能であった。また、精製されたTKに比し血清中のTKは安定であり、4℃での2〜3日の保存や2〜3回の凍結融解を繰り返してもTK活性はほとんど低下しなかつた。 2.肺癌化学療法前後の血清TK活性の測定 肺癌術後の補助化学療法施行症例を対象として、化学療法施行前から経過をおって血清TK活性を測定した。化学療法として主にCDDP(80mg/m^2、第1日)、VDS(3mg/m^2、第1日と第8日)、MMC(8mg/m^2、第1日)を投与した。血清TK活性は、まず、抗癌剤投与直後に上昇した。これは主に抗癌剤の骨髄障害により、造血細胞から細胞内TKが逸脱するものと考えた。また、白血球減少に対してG-CSFを使用すると、白血球増加に僅かに先立って、再び血清TK活性が上昇した。以上により、血清TK活性は、造血細胞の障害時のみならず造血細胞再生時にも上昇するものと考えられた。これらの実験結果から、血清TK活性は、抗癌剤の骨髄に及ぼす障害程度と骨髄の再生経過の両者の指標となり得る可能性が示唆された。 3.TKモノクロナル抗体の応用 第一生化学教室の藤村等が開発中のヒトTKモノクロナル抗体を用いて、血清TK蛋白測定を試みたが、血清のTK蛋白量は少なく、現在のところ血清TK蛋白の測定には成功していない。
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