研究概要 |
1,対象と方法. 雑種成犬にて右主気管支を使用した気管再建術を施行した。 反転気管支群(8頭):右開胸にて上葉を切除,気管分岐部上3軟骨輪より上方の5軟骨輪の気管を切除した。中下葉分岐部直上にて中間気管支を切離,気管分岐部上の切離部を閉鎖後,主気管支を反転させ,気管と端々吻合した。中下葉支は左主気管支に側端吻合した。 遊離気管支群(6頭):同様に右上葉と気管分岐部上5軟骨輪より上方の5軟骨輪の気管を切除した。右気管支を気管分岐部直下および中下葉支分岐部直上にて切離し,遊離気管支を作成,気管切除部位に間置した。中下葉支は気管分岐部に吻合した。 両モデルにおいて有茎大網弁にて吻合部を被覆した。 術後定期的に気管支鏡により吻合部,気管支上皮の観察を行い,またCarbon Particlesを気道に置き,10分ごとにその位置を観察し線毛運動を検討した。組織学的検討を光顕および走査電顕にて行った。 2.結果. 反転気管支群においては2頭で吻合部の肉芽が認められたが,全例生存した。気管支鏡的には7日目までは発赤腫脹が認められたが,3週後にはほぼ正常所見を呈していた。光顕,走査電顕では10日目では気管支上皮は脱落していたが,20日後には気管支上皮は再生し,1か月では走査電顕でも線毛が認められたが,線毛運動は消失していた。遊離気管支群においては間置気管支の虚血所見は著しく,正常所見になるには約5週間を要した。1例では上葉支断端が潰瘍状態となっていた。線毛運動は消失していた。
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