研究概要 |
本研究は逆行性脳潅流時の脳微小循環を生体観察し、臓器循環の立場から逆行性脳潅流法の意義を評価する事を目的とし遂行、以下のような研究成果を得た。 1 Wistar 系ラットを用いて落射型蛍光顕微鏡下に Closed Cranial Window を通して、種々の条件下での逆行性潅流時の脳循環を観察したところ、大動脈遮断前、逆行性潅流時における脳微小循環の変化を観察したところ、arteriole,venule での血管形態および血流速度は大動脈遮断前では生理的範囲にあったが、逆行性潅流を行うにつれて形態的にarteriole の細小化、venule の膨化が認められ、血流速度は遅いものの静脈側から動脈側へ逆行性潅流が認められた。 2 逆行性潅流量、潅流圧、頭蓋内圧(脳脊髄液圧)を随時調節する事により最適な脳微小循環を得るための条件を検討した。以下の如き結果が得られた。 (1)逆行性潅流量は実験当初は逆行性潅流における重要な変数と想定していたが、脳表微小循環の変化を観察していると逆行性潅流量よりも逆行性潅流圧が変動する事が脳表循環の良否に関連する事が観察された。逆行性潅流圧としては20-30mmHgでの条件下で良好な逆行性潅流が観察された。 (2)頭蓋内圧が異常に高い条件や異常に低い条件では脳表微小循環の悪化が観察された。頭蓋内圧としては通常のラットにおける生理的頭蓋内圧よりも若千低い1-3cmH20 程度で脳表微小循環が保たれた。 本実験系ではcontrast medium としてFITC albumin 赤血球懸濁液をもちいたため、正確な潅流血流速度は計測できなかった。現在FITC 赤血球液による血流速度の測定に着手しており、さらに逆行性脳潅流法の基礎的研究に寄与すべく研究を継続していく方針である。
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