心臓、心肺移植後の拒絶反応の判定に於いて心筋生検法に取って代わり得る非侵襲的かつ早期の検査法として、拒絶に際し観られる侵潤細胞の表面抗原を遺伝子レベルで捕らえる方法を考案し、以下の実験を行った。 実験動物として体重200〜250gのドナーにWister-Kingラット、レシピエントにLewisラットを用い、腹部に異所性心移植を施行した。移植後5日目に犠牲死させた移植心よりRNAを抽出し、IL-2、IL-2リセプター、IL-6、TNF各種インターロイキンに対するRNAプローベをPCR法により作成した。次にこれらのプローベを用いて、以下の各群の移植心組織、並びに末梢血リンパ球の表面抗原の発現状況を検討した。各群は1)免疫抑制剤非投与群、2)サイクロスポリンA投与群(8mg/Kg/day)、3)FK506投与群(5mg/Kg/day)、4)レスキュー群(移植後3日目よりプレドニゾロン5mg/Kg/dayを投与)を設定し、コントロール群として同型移植群を設定し、各々移植後、3、5、7日目に犠牲死させた。また、末梢血中のリンパ球は、犠牲死させた際同時に採取し、ファイコールにて分離した後検体として用いた。更に、結果。コントロール群は3日目に各種インターロイキンがピークを示したのに対し、免疫抑制剤非投与群は、5日目にピークとなっていた。各免疫抑制剤投与群はコントロール群とほぼ同様の結果を示した。非投与群の移植心の組織は、5日目に拒絶反応が最も強く、7日目には拒絶により心停止していた。これらのことから侵潤細胞の表面抗原の発現状況と、光顕による病理学的拒絶反応の組織診断は相関関係が認められた。また、3日目のインターロイキン発現は、手術侵襲に対する炎症反応によるものと考えられた。末梢血リンパ球については、結果値の変動が大きく、有意な相関関係は認められなかった。また、レスキュー群についても、移植心の組織と表面抗原の発現との間に、相関関係が認められた。
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