雑種成犬8頭を用いて同所性心臓移植を施行し、長期生存犬における冠動脈病変について病理学的に検討した。 生存犬Aの冠状動脈病理学的変化は、冠状動脈内弾性板の破壊は伴わず、血管内膜における著明なフィブリンの集積、内膜の肥厚、clasto fibrosisの増生が著明に認められた。冠状動脈内膜におけるフィブリンと好中球、マクロファージの集積は、血管内腟の全周性の狭小化の直接的な原因となっている。同様の冠状動脈狭窄所見は、右冠状動脈、左回旋技領域にも認められた。血管径においては、500mum以上の太区間及び100mum〜500mumの中区間の冠状動脈に高い狭窄度を示し、50mum以下の心筋冠血管においては、狭窄性変化は比較的軽度であった。生存犬Bの左前下行技の冠状動脈所見は、フィブリンの内膜面での集積が硬化に転じ、コラーゲンが増生している所見が認められる。これは生存犬Aと同様に50mum以下の血管についてもびまん性にフィブリンの冠状動脈内腔への集積が認められ、冠血管全周性にこのような病理組織学的変化が及んでいることを示していた。 電顕所見では毛細血管に接着しているリンパ球、マクロファージの集積が認められ、フィブリンの集積とともに血管内腔の狭小化の原因であると考えられた。これらの血球の集積は心筋組織への血液流量の低下を示唆するもので、大〜中等度径の冠状動脈でのびまん性冠状動脈狭窄による組織灌流の低下による病理所見であると考えられ、これら生存犬A、Bでの血管病後は、極めて近似していた。また、血管径における狭窄度の分布を検討すると、生存犬Aでは左前下行技:太区間70±15%、中区間55±17.8%、細区間61.8±18.7%、回旋技:太区間67.9±5.4%、中区間33±20.6%、細区間45.2±25.5%、右冠状動脈:太区間62.5±7.5%、中区間24.7±15.8%、細区間51.8±23.2%と各領域ともびまん性の狭窄所見を示し、特に右冠状動脈、回旋技領域の中区間冠状動脈に、他領域に比し、高度な狭窄所見を認めた(p<0.05)。また生存犬Bにおいては、左前下行技太区間68.3±11.7%、中区間49.5±18%、細区間55±19%、回旋技太区間65.5±11.5%、中区間64.1±10.8%、細区間74.1±6.2%、右冠状動脈太区間61.5±10.5%、中区間475±10.6%、細区間78.8±7.6%、と左前下行技、右冠状動脈領域の中区間の冠状動脈に有意な狭小化を示していた(p<0.05)。
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