研究概要 |
雑種犬を用いて、全身麻痺下で胸腔内の心・肺移植(working心・肺モデル)を行い,移植心の心房に電気生理学的検査用の双極電極を装着した。免疫抑制療法として、維持量の免疫抑制剤(cyclosp0rine 5-10mg/kg/day,prednisolone 0.5-1.0mg/kg/day)を経口投与した。術後毎週1〜2回、ツールカット・アスピレーション生検針を用いた心筋生検またはバイオトームを用いた経気管支的肺生検を行い、同日に電気生理学的検査を中心とした心機能評価、放射線学的検査を中心とした肺機能評価を行った。電気生理学的検査では主に心房早期刺激法により刺激伝導系の有効不応期を測定し、放射線学的検査では過呼吸、息こらえなどの各種の呼吸生理学的負荷状態での気管内吸入中の胸部X線撮影を行い、透過度を半定量的に評価した。採取した生検組織は、光学顕微鏡的所見により、国際心肺移植学会基準に基づいて移植心・肺の拒絶反応の病理組織学的重症度を判定した。刺激伝導系の有効不応期は、移植心の拒絶反応の病理組織学的重症度に対応して40〜50%延長し、拒絶反応の治癒に伴いコントロール値(平均116±14msec)に回復した。呼吸生理学的な胸部X線撮影では、移植肺の中等度拒絶反応の際に透過度の低下がみられ、免疫抑制剤の増量により拒絶反応の病理組織学的重症度とともに改善した。以上の結果より、臨床に即した胸腔内心・肺移植における急性及び慢性拒絶反応の非侵襲的な超早期の可能性が示された。今後、移植実験数を増やした上で、心・肺機能検査の個々のデータをコンピューターに登録し、次いで拒絶反応の病理組織的重症度を入力して、個々のパラメーターと拒絶反応の重症度の相関関係を解析しする予定である。
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