移植心冠動脈病変(GCAD)は著しく急速な進行を遂げるという特徴がある。そこで移植後の高脂血症、およびFish oilに豊富に含まれるomega-3系多価不飽和脂肪酸の一種である。エイコサペンタエン酸(EPA)の抗動脈作用に注目し、GCADの進展に及ぼす影響をラット異所性心移植モデルを用いて組織学的に検討を行い以下の結果を得た。 1.Lewisラットによる同系間心移植(I群)では、移植心冠動脈に明らかな内膜病変は認めず、1%コレステロール食負荷でも同様であった。 2.ACIラットをドナー、Lewisラットをレシピエントとした異系間心移植(II群)では、サイクロスポリンA(CsA)投与により拒絶反応は抑制されたが、移植後60日で移植心冠動脈に繊維性増殖主体の内膜肥厚が高率に認められ、この病変は細冠動脈に顕著であった。 3.II群の1%コレステロール食単独負荷では、CsA投与により血清総コレステロール値(TC)、LDLコレステロール(LDL-C)の上昇が促進され、移植心冠動脈の病変率が増加するとともに肥厚内膜の空砲形成、内弾性板の断裂を認めた。 4.II群のEAP投与では、1%コレステロール食負荷による血清TC、LDL-Cの上昇が抑制され、移植心冠動脈の内膜肥厚病変が減少した。 これらのことより、GCADは免疫反応による内皮障害に端を発しているが、CsAが引き起こす高脂血症はGCADの進展を促進させる重要な因子であると考えられる。また、高純度EAPはGCADの進展を抑制する可能性が示唆され、今後はEPAの内膜肥厚抑制機序、とくに抗血栓性のシフト及び免疫組織学的検討も要すると考えられた。
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