〔目的〕これまでに明らかにされたクモ膜下出血後の攣縮血管壁中の高エネルギーリン酸の低下と、持続的な収縮とを結びつける機序を解明するため、おける平滑筋のCalciumの膜透過性の変化を蛍光指示薬fura-2を用いて検討した。〔方法〕Double hemorrhage canine modelを用い、取り出した脳底動脈片に、fura-2にアセトキシメチル基を付けた膜透過性のfura-2/AMを3時間、少量の界面活性剤の存在下に負荷した。内皮を剥いだ血管片に内側より紫外線を当て、2波長励起下の蛍光度F340、F356およびその比(R)をmonitorした。F356は細胞内Calcium濃度に関係ないdye lossの指標とした。controlとして非出血犬より取り出した動脈を用いた。細胞膜のカルシウム透過性の変化を観るため、Ca^<++>-EGTAbufferを用い細胞外のカルシウム濃度を低濃度より段階的に上昇させた(pCa8-2)時のR値の変化を観た。また同様の測定をすべてをinomycinの存在下、すなわちカルシウムに対し膜を透過性にした状態で繰り返し測定した。〔結果〕正常血管、攣縮血管共に細胞外のCa^<++>濃度の上昇に伴ってR値、即ち細胞内Ca^<++>濃度は上昇したが、curveは出血犬で左方移動しており外液変化による細胞内calciumの上昇が起こりやすい事が示された。またcalciumに対し膜を透過性にしたionomycin処理の影響を観てみると、正常血管ではionomycinの処理によってcurveは攣縮血管のpatternに近づいたが、攣縮血管ではionomycinの効果は非常に小さかった。すなわち攣縮血管ではionomycin処理と類似の変化が既に起こっている可能性が示唆された。〔結論〕クモ膜下出血後の攣縮血管では平滑筋細胞膜のcalcium透過性が亢進し、calcium homeostasisに大きな変化が起こっていることが示唆された。
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