砂ネズミ一過性前脳虚血モデルを用いてユビキチンの免疫染色性の変化を観察し、ユビキチンと神経細胞死の関係を検討した。砂ネズミの両側総頚動脈を5分間閉塞して前脳虚血を負荷した。虚血の3、6、12、24、48時間後に動物を灌流固定し、Vibratomeにて海馬を含む50mumの切片を作成した。4種類の抗ユビキチン抗体を用いABC法により免疫染色をおこなった。使用した抗体は1)ウサギポリクローナル抗体(Sigma U-5379)2)ラットモノクローナル抗体(DF2)、3)マウスモノクローナル抗体(Chemicon)4)マウスモノクローナル抗体(Iqbal 5-25)であった。Sigma U-5379では虚血後3-6時間で海馬CA1領域の染色体が低下し回復は見られなかった。一方、DF2、Chemiconでは虚血後の海馬CA1領域の染色体の低下は軽度であり、48時間後には正常の対照と同レベルまで回復した。Iqbal 5-25 ではSigmaと同様に海馬CA1での虚血後の低下が観察された。以上の抗体による染色体の著しい違いは、抗体のユビキチンの認識様式の差異によるものと考えられた。Iqbal 5-25 が主としてconjugated form のユビキチンを認識することから、虚血の後に細胞死に先立って、ユビキチンのconjugation の障害があるものと想定された。
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