副腎髄質と前切断した末梢神経のコグラフトのパーキンソン病モデル動物に対する効果について、特にドナーの年齢要因の面から検討した。副腎髄質の移植方法としては、単独で宿主線条体内に移植した群(副腎髄質単独移植群)と、24時間前に前切断を行った坐骨神経の遠位端と同時に移植した群(コグラフト群)に分け、さらに各々をドナーの年齢要因から、若年マウスをドナーとした群と老齢マウスをドナーとした群に分けた。移植1カ月後にsacrificeし、移植クロマフィン細胞の生着率、宿主内因性ドーパミン線維の回復程度について、抗tyrosince hydroxylase(TH)抗体を用いた免疫組織化学および高速液体クロマトグラフィーによるドーパミン濃度の生化学的分析を行った。ドナーの年齢にかかわらず、コグラフトすることによって、副腎単独移植に比べて移植クロマフィン細胞の生着率は向上したが、老齢マウスをドナーにした場合は若年マウスをドナーにした場合に比べて生着率は低かった。宿主の内因性ドーパミン線維の回復の程度も、コグラフト群で副腎単独移植群より促進されていた。しかし、その程度は老齢マウスをドナーとした場合の方が若年マウスをドナーにした場合に比べて有意に低かった。これらの結果は、末梢神経に含まれている神経成長因子(NCF)に対する副腎髄質クロマフィン細胞の反応性が、加齢とともに減弱することを示しているものと考えられる。パーキンソン病は主に高齢者に発症する神経変性疾患であるから、このような老齢動物を用いた検討も今後重要な課題である。
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