研究概要 |
頭蓋内悪性リンパ腫18例(全てnon-Hodgkin,diffuse typeでmixed type 4例、large cell type 10例、immunoblastic type 4例)の細胞増殖能を組織切片上で客観的に観察するため、AgNORs法及び抗PCNA抗体による免疫染色の2つを用いて検討した。それぞれのカウント数、或いは陽性細胞率(AgNOR数、PCNA標識率)を求め、増殖能の指標とし、その予後、病理学的組織分類、治療効果との比較検討、また用いた2つの指標の相関関係を検討した。AgNOR数は18例で3.70〜6.70個、平均は4.58個であった。PCNA標識率は31.0%〜50.5%、平均は37.0%であった。AgNOR数とPCNA標識率の2つの指標の関係を見ると相関係数r=0.89でAgNOR数とPCNA標識率の間に正の相関が見られた。2つの指標とも細胞の増殖能を推察するうえで有用と考えられた。病理組織型別にそれぞれの指標の検討を行うとAgNOR数についてはその平均値はmixed type 4.21,large cell type 4.39,immunoblastic type 5.41となり、統計学的に有意差はないが、悪性度の高いものほど高い値となる傾向があった。PCNA標識率についても組織型別にみると、その平均値は34.1%、37.6%、42.5%と同様の傾向があった。統計学的にはmixed typeとlarge cell typeのあいだに5%の危険率で有意差を認めたが、他群との間には有意差は認めなかった。またAgNOR数、PCNA標識率の2つの指標と治療効果、予後などの臨床的データとの関連を検討したが、これら臨床的データとAgNOR数、PCNA標識率の値との相関は見られなかった。予後に関しては、他の要因を含めた総合的な判断が必要と思われた。
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