30分間の中大脳動脈閉塞による一過性脳虚血を施したラットでは、non-limbic striatumに一致する線条体背外側部に限局した遅発性神経細胞障害を呈することを確認した。この障害部位はcell-type specific injuryで特徴づけられ.中型有棘細胞の選択的脱落を呈していた。線条体-黒質系では黒質網状部の外側部にのみstriatonigral afferentsの消失をみた。従って、この動物モデルでは脳基底核神経回路網の中でmotor circuitが選択的に傷害されているものと考えている。また本動物モデルはapomorphine(dopamin agonist)及びMK801(NMDA-receptor antagonist)投与により、ipsiversive rotational behaviorを呈し、これは用量依存性であった。線条体虚血巣の神経終末についてsynaptophysinを指標にして経時的に検索すると2週目までは一過性にその発現が増加しており、4週後にはほとんど消失していた。これはtarget neuronを失ったnerve terminalの機能及び解剖学的変化を示しているものと考えている。また、線条体虚血巣に胎齢14〜15日のラット胎仔のstriatal promordiaを定位脳手術的に移植したところ、移植細胞は生着・成長を示し、手術後6ヵ月後の検索では、移植組織細胞の多くが中型有棘細胞のmarkerであるカルシウム・カルモデュリン依存性酵素(calcineurin及びCaM-kinase II)の免疫活性を有していた。さらに、移植細胞からは淡蒼球に対し、遠心性線維の投射が確認された。(投稿中)。今後更に一過性脳虚血に伴う大脳基底核障害の病態解析及び移植治療について検索を進める予定である。
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