脊髄空洞症の空洞発生および拡大機序について、今なお不明な点が多い。現在までに我々は実験的に頸椎前屈位で脊髄内圧(脊髄内の圧力)が上昇することを明らかとした。このことより頸髄髄内に空洞が生じた場合、頸椎前屈位による脊髄内圧上昇が脊髄循環障害を来たし、このことが空洞拡大の一因と考えている。今回、脊髄内に空洞が生じ、拡大していく原因として循環障害の有無を明らかにすることを目的とする。 [実験方法]実験方法として雑種成犬を用い、脊髄血流測定としてはLaser dopplerを用い、第5頸椎を椎弓切除し第5頸椎高位硬膜上にLaser dopplerプローベを置き頸椎中間位、前屈位での脊髄血流を測定をおこなった。つぎに第5〜6頸椎を椎弓切除、第5頸椎高位の軟膜を後正中切開後脊髄内にバルーンカテーテルを挿入し、頸椎中間位、前屈位での脊髄内圧の測定を行った。 [結果]脊髄血流は、頸椎中間位、前屈位で有意な血流の変化は示さなかった。脊髄内圧は、頸椎中間位に比べ前屈位にて有意に脊髄内圧の上昇を認めた。 [考察]脊髄内圧は、頸椎中間位に比べ前屈位にて有意に脊髄内圧の上昇を認めた。この頸髄内圧上昇には頸髄伸張が関与していると考えている。山田らは、索引により脊髄の局所的脊髄虚血が起こることを報告している。今回の実験において、脊髄血流が頸椎中間位、前屈位で有意な血流の変化は示さなかったことは、脊髄後面白質の血流は頸椎中間位、前屈位に影響しないものと考えられる。しかし、頸椎動態による脊髄灰白質の血流変化については今回の実験では明らかにすることはできず、今後、microsphere法による灰白質および白質での脊髄血流測定を行っていきたい。また、脊髄空洞症の空洞拡大を観察する慢性実験にまで至らず今後行っていきたい。
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