1)IL-10のPBLよりのIFN-gamma産生に及ぼす影響1×10^6/mlのPHA-PBLは、約250pg/mlのIFN-gammaを産生した。IFN-gammaの産生量はグリオーマ細胞培養濃度に反比例して低下した。さらにこのPHA-PBLをanti=IL-10mAbもしくはanti=TBF-betaで処理したところ、グリオーマ培養上清の有無に拘らずIFN-gammaの産生量は著しく亢進した。一方、anti=TGF-betaの及ぼす影響は軽微であった。 2)IL-10のHLA-DR発現に及ぼす影響:上記の如く調整したMonocyteはクラスII抗原を強く細胞膜表面に発現した。しかしrIL-10存在下では著明に減少した。一方、Monocyteをanti-IL-10mAbで処理してもHLA-PRに発現量は変化しなかった。次いで、グリオーマ由来IL-10のHLA-DR発現に及ぼす影響を検討したが、U373MG培養上清(20%)存在下で発現量は低下し、この減少はanti-IL-10mAbで回復するとともに、基準値以上を示した。 3)IL-10のPBLよりのTNF-alpha産生に及ぼす影響:次にPHA-PBLよりのTNF-alpha産生量をELISAで測定した。U373MGグリオーマ培養上清は、PHA-PBLよりのTNF-alphaの産生を濃度依存性に抑制した。この作用は、anti-IL-10mAbの添加によって回復した。一方anti-TGF-betaには、グリオーマ上清のTNF-alpha産生抑制作用を阻止する影響は有しなかった。 4)悪性グリオーマ組織中に発現される抑制性サイトカインと臨床悪性度:抑制性サイトカイン、特にIL-10が抗腫瘍免疫の抗原認識及び腫瘍性サイトカイン産生に抑制的に作用することから、臨床悪性度を規定する因子の可能性を考え、12症例の悪性グリオーマ組織を検討の対象とした。病理学的に悪性グリオーマと診断された12症例をA)localized glioma;CT、MRI上表層に限局し、治療後再発しない予後良好群8例 B)Invasive glioma;治療後、再発、浸潤性変化を示す予後不良群4例とに分類した。グリオーマ組織中に発現されるサイトカイン mRNA transcriptsをRT-PCR法で検索した。結果はA群では主にIL-6、TNF-alpha、IFN-gamma、GM-CSFの抗腫瘍性サイトカインが発現されており、IL-10は2例に示すのみであった。一方、B群ではこのIL-10が全例発現されているが、抗腫瘍性サイトカインの発現はあまり認められなかった。以上の結果からIL-10mRNA発現の有無がグリオーマの悪性化を示唆するものと思われた。
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