今年度は飢餓低Na血症猫モデル、すなわち低膠質浸透圧血症-低Na血症猫モデルの作成をまず目標とした。通常のADH分泌不適合症候群では口渇感は異常に保たれ低浸透圧にも拘わらず、飲水活動は継続する。しかし、本モデルの如く強制的ADH投与による低Na血症モデルでは口渇感が保たれないせいか飲水量が減少し、飢餓状態と合重なり実験計画の途中で死亡する成猫が存在し、最大の問題点となった。今後、適正な飢餓期間、飲水量を模索するとともに、必要に応じて自然摂取のみでなく定期的蒸留水点滴も考慮すべきと思われる。 低膠質浸透圧血症-低Na血症猫モデルとして生存した2匹では、高張食塩水静脈内投与による低Na血症の急速補正を行い、脳組織内のmyelinolysisが実際生じるか否やの確認を試みた。ここでは、やはりNaの急速補正の速度を成猫の場合にどの程度にするかの基礎的検討の必要性を痛感した。とりあえず6時間の経過で20mEq/lのNa値の上昇を目標にし実行したが、myelinolysisの形成までの慢性期の観察時に、恐らく急激な高張性輸液投与に起因した腎不全を合併し、結局2匹とも1週間後の断頭を余儀なくされ、また病理学的に脳組織myelinolysisの所見は得られなかった。この、急速補正に関連した全身疾患の合併は当初の計画では考慮しておらず、高張食塩水の適正濃度の再検討が必要である。 以上、今後、特にモデル作成までの基礎的検討を充分行い、当初のそれぞれの実験群をconstantに作成してゆく努力が必要と思われた。
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