視覚性注意における前頭葉の影響を検証するためにreaction time taskを作成し左右前頭葉損傷群それぞれ7例ずつ、および正常対照18例に適用した。 taskは次のごとくである。14インチコンピュータ画面上に中心固視点と、等間隔に配列された左右3本ずつ計6本の垂直なcolumnを提示し(初期画面)、200ms、500ms、800ms、1300msの間隔をおいた後それぞれのcolumnのいずれかの部位に欠損刺激を発生させ(刺激画面)、これを繰り返す。初期画面から刺激画面までの間隔と刺激出現部位はいずれも不規則である。被検者は狙撃認識後出来るだけ早くボタンを押すことによってこれに反応するよう指示され刺激出現から反応までの時間は反応時間として各columnごとに記録される。反応には前頭葉損傷群では損傷と同側示指を用い、また正常対照群では右手反応群、左手反応群を設定した。 中心固視点より左の3本のcolumnを左空間、右3本を右空間とし左右空間での反応時間の比較を行い、さらに各columnにおける反応時間の比較を行った。このとき各部位での反応時間の平均値を算出した上で分散分析による比較を行った。この結果正常対照群および右前頭葉損傷群においては左右空間および各columnにおける反応時間に有意差はみられなかったが、左前頭葉損傷群においては反対側すなわち右空間の視覚刺激に対する反応の遅延が検出された。 従来視覚性注意について右大脳半球、特に後半部の関与が注目されていたが今回の実験の結果により左半球前半部にもその機能分布が存在する可能性が考えられた。今後は前頭葉損傷について弓隆部、内側面、底部等に細分化した上での検討が必要と思われる。
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