研究概要 |
鶏や家兎の屈筋腱は実験的に得られやすいが、臨床的にはヒトの屈筋腱の治療のための研究であるため、あえて手術時に得られたヒトの屈筋腱および伸筋腱を無菌的に採取し、これを実験的に培養した。腱を約5mmの分節状に切断して、10%牛胎児血性、硫酸カナマイシン添加Medium199(ニッスイ)を用いて5%CO_2、37℃、湿度100%の条件で、ステンレス金網台の上で培養した。培地交換は3日毎に行い、培養3日、6日、9日、2週時に取り出し、ブロモデオキシウリジン(BrdU、200muM、シグマ)添加RPMI1640培地(ニッスイ)に移し、酸素を加えて3気圧にした。37℃、1時間振盪培養した後、固定し、パラフィン包埋後、薄切、脱パラフィン、内因性ペルオキシダーゼ活性を阻止。塩酸で処理後、0.1MNa_2B_4O_7で中和した。抗BrdU抗体を作用させた後、ホ-スラディシュペルオキシダ-セ標識二次抗体を30分作用させ、DABで発色、核染色はヘマトキシリンを用いた。培養腱の切断端に出現した細胞の、BrdUでの標識率を計算し、各々の時期における細胞の分裂能を推定した。そのほかに、同時に得られた資料を用いて、核分裂能を有する細胞の核に存在するとされる増殖細胞核抗原(PCNA)を同時に確認するため、抗PCNA抗体を用いて免疫染色した。 [結果]BrdUでの標識は腱のepitenon,endotenonの細胞に確認されたが、一部成熟したと思われるtenocyteにも標識され、腱の全ての細胞の再生への関与が示唆された。断端の細胞の標識率は、培養6日目で4.8±2.7%(n=39)、9日目で8.8±8.8%(n=32)、2週目で0.6±0.7%(n=45)であった。PCNAの標識率は培養6日目で20.7±14.9%(n=30)、9日目で27.2±10.6%(n=32)、2週目で6.4±2.3%(n=24)と全体に標識率は上昇するもののほぼ同様の傾向が認められ、培養9日目が最も標識率が高かった。
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