脊椎靱帯骨化症において靱帯組織が、骨組織へ変化する課程は様々な方向から検索されている。脊椎靱帯骨化を形成する細胞の由来に関して、血流を介して遊走してきた外来の細胞が寄与しているのか、あるいは内在する靱帯細胞そのものが、metaplasiaなどの過程を経て骨組織に移行するのかも未だ解明されていない。 靱帯骨化の有無にかかわらず、ヒト培養靱帯細胞の膠原繊維合成には差がなく、靱帯を構成する線維芽細胞に形態学的な差があるとは考えにくいこと、靱帯組織内に周囲組織と隔絶された骨化組織の存在することなどから、変性、ストレス、老化、あるいは内分泌ホルモンなど何らかの外的要因が、局所の靱帯細胞に作用し、metaplasiaを経て骨化に進展するとの仮説をたてた。 我々は、術中に採取した脊椎靱帯骨化組織におけるmetaplasiaの過程を、光顕的正常線維芽細胞、化生線維芽細胞、線維軟骨細胞、軟骨細胞、骨細胞に分け、免疫組織化学的にそれぞれのpheno typeを同定した。次に成長ホルモン、フィブロネクチン、サブスタンスPをそれぞれ添加し培養したヒト培養脊椎靱帯細胞で、pheno typeが再現されるかどうか検索した。 骨化組織では化生線維芽細胞にS-100蛋白、線維軟骨細胞、軟骨細胞にS-100蛋白、テネイシンが陽性となり、線維芽細胞、化生線維芽細胞には5B5が陽性となった。ヒト培養脊椎靱帯細胞ではpheno typeは、5B5以外全く再現されなかった。 脊椎靱帯細胞が骨化組織へ進展する前段階であるmetaplasiaを引き起こす外的要因を検索するために、ヒト培養脊椎靱帯細胞を用いたが、pheno type発現には至らず、培養条件など今後の検討を要すると考えられた。
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