脊椎椎間板病変に対する現在の手術治療は椎間板切除と骨移植による椎間固定術である。その成績はおおむね良好であるが、脊椎可動性減少と固定に伴う隣接椎間板障害が問題になる。そこで椎間板切除後に可動性を残す方法としての椎間板移植を冷凍保存同種椎間板を用いて実験を行なっている。雑種成犬の腰椎部を無菌的に採取した後、椎間板をはさむ上下椎体の一部を含む椎体.椎間板ユニットに分削して緩徐冷凍保存した。保存したユニットを他犬の腰椎椎間板切除部へ移植し、金属プレートを用いて内固定を施す。経時的にそれを取り出しX線学的、組織学的に観察すると移植後12週では移植椎間板は良好にレシピエントに生着し組織学的にも変性所見は認めないが、48週経過した長期観察犬では移植された椎間板はややその高さを減じ、組織学的には軟骨気質の合成能の低下が認められた。そこでこの変性所見を示した移植椎間板の生体力学的特性を検討したとしても、臨床応用へ直結する可能性は薄い。移植後の組織変性を最小限にくいとめるためには、できるだけ新鮮な状態を保ったまま保存されなければならない。現在は、凍結、冷凍保存のいろいろな条件を変えながら椎間板の生物学的活性を保てる保存方法を研究している。
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