大腿骨頭壊死症患者に対する人工骨頭置換術の際に摘出した骨頭標本より直径8mm、高さ8mmの円柱形の資料片を作成し、万能力学試験機にて静的圧縮試験を行い、壊死部、正常部の圧縮弾性率と極限応力を測定した。しかし、陥落の進行度、標本の採取部位により大きく値がばらつき、また資料数も少ないことから力学的特性に一定の傾向は得られなかった。したがって有限要素法においては、材料定数をパラメータとして解析した。レ線像より大腿骨頭壊死症の有限要素法モデルを作成し、壊死の範囲が陥没発生に及ぼす影響や開店骨切り後の応力分布などについて解析を行った。その結果、分界部に壊死部より弾性率の高い添加骨を設定するすることにより荷重部軟骨下骨梁への応力集中を認めた。杉岡式前方回転骨切り術を施行した場合、壊死部は内側下方に移動することにより応力緩和を認めた。また臼蓋荷重部に対する骨頭健常部の占拠率が大きいほど緩和効果は著しく、臨床所見とよく一致した。 一方、従来より前方回転骨きり術の適応を決定する際には、単純レ線における骨頭表面の線分の長さから健常部占拠率などを計測し、判断の材料としていた。しかし、本来健常部占拠率は面積で表現したほうが、臨床結果をよりよく反映するのではないかと考え、新たにC言語にてプログラムを開発した。このプログラムは単純レ線前後、側面像の2枚のみからデジタイザーにて指定点をプロットすることにより、骨頭の直上から観察した臼蓋の被覆部、骨頭および壊死領域を同時に表示することができる。また回転骨切り術単独や内反を加えた場合の骨切りシミュレーションや術後の屈曲位での状態も自由に表示が可能であり、健常部占拠率の計算も行う。本プログラムは、CTによる3次元再構築と異なり、入力は簡便で約1分で終了する。過去の手術症例の再検討も可能であり、臨床上、手術術式の決定や術後の評価において極めて有用であると考えられる。
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