骨Paget病は原因不明の慢性進行性の局在性骨病変で、骨盤、頭蓋骨、大腿骨、脊髄骨に好発し、骨吸収とこれに続く無秩序な骨形成、骨turnoverの異常な更新を示し、組織学的には骨形成と骨吸収とが混在した特徴的なmosaic patternを認める。本症は病変の広がりによりpolyostotic typeとmonostotic typeに分けられる。この差異は病期によるものか本能的差違によるものかは不明である。今回われわれは著明な骨変形を示したpolyostotic typeの骨Paget病と考えられる症例について病理解剖する機会を得たので、その骨代謝機構の一端を明かにするため、破骨細胞を中心として酵素・免疫組織化学的検討を加えた。症例は、51才女性、38才の時、両股関節痛にて発症し、以後、約13年にわたって、慢性進行性に頸椎、大腿骨、上腕骨、肋骨に著明な変形をきたし、43才頃より頸椎の変形による頸髄症性四肢麻痺をきたし、最終的には呼吸不全にて死亡した。剖検の結果、上記の骨病変部位は骨吸収部と骨形成部が入り乱れた特徴的なmosaic patternを示し、多数の破骨細胞を認めた。さらにこれらの破骨細胞の骨吸収活性を検討するために酒石酸耐性酸フォスファターゼや骨吸収と深い関係のある炭酸脱水酵素について陽性所見を認めた。
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