研究概要 |
【はじめに】椎間板炎の原因や、菌の波及経路などに関しての結論は得られていない。椎間板炎から波及して椎体炎に進んでゆく過程において、あらかじめキモパパインにより髄核を溶解するとどう変化するかを観察した。雑種成犬の椎間板に透視下にキモパパインを注入し髄液を溶解、2週後に椎間板に黄色ブドウ球菌を注入し、椎間板炎の進行過程を経時的に観察した。この結果は、第83回日本病理学会総会(京都)において発表予定である。 【目的】正常椎間板における大野、新井らの実験的椎間板炎モデル(第79,81回日病会総会)と、変性椎間板における同モデルとのX線学的、病理学的、比較検討。 【方法】変性椎間板モデルのひとつとして雑種成犬の椎間板にキモパパイン0.5ml(1000単位)を注入し髄核を溶解。2週間後に同じ椎間に黄色ブドウ球菌浮遊液を注入、経時的にX線撮影し1〜26週の間にて剖検し矢状面病理標本を作製した。 【結果】髄核はキモパパイン処理により速やかに溶解され、X線状も椎間腔が狭小化した。黄色ブドウ球菌注入後、1週で椎間板に接する椎体縁の骨吸収像が見られ、6週では全く既存の椎間板構造は消失し、小血管を伴った線維化を認め血鉄素を伴った組織球、プラズマ細胞浸潤が見られた。椎間板前方では軟骨細胞の増生が見られ、骨膜性骨化が著明であった。20週を過ぎると、前方で上下椎体が骨性癒合しており、一部に残った椎間板は、硝子様で集簇性に軟骨細胞の増殖を認めた。 【結論】短期観察例では、若干の違いが見られたが、長期観察例では、正常椎間板における結果と同様に椎間板が消失し上下椎体が癒合してくる傾向にあった。 【今後の研究方針】変性椎間板のモデルとして他の方法を用いて実験を計画して行く予定である。
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